日本マイコトキシン学会 Japanese Society of Mycotoxicology

会長挨拶

マイコトキシンとの言葉から、中世ヨーロッパの麦角中毒や強い発ガン性を持つアフラトキシンを連想される方がいらっしゃるかもしれません。カビには農作物などの植物に感染して成育する種が多く存在しますが、カビが農作物中に産生する、ヒトや家畜に毒性を示す物質のことをマイコトキシンと呼びます。なぜカビがそのような毒性物質を産生するかはよく分かっていませんが、ヒトや家畜はアフラトキシンなどのマイコトキシンが含まれていることを知らずに農作物を食べる訳ですから、農作物のマイコトキシン汚染は、食品や飼料の安全性を考える上で大きな問題となっています。日本マイコトキシン学会(2007年まではマイコトキシン研究会)は、そのようなマイコ
日本マイコトキシン学会会長作田庄平

トキシンに関する研究を通して、食の安全、健康、人類の安定した生活等に寄与する科学、技術、文化を発展させることを目的として1974年に発足しました。
本学会には二つの大きな特徴があります。一つは、最新の情報を会員の皆様に提供するために活発な活動を行っていることです。特に、研究成果発表、シンポジウム、特別講演、企業展示などを行う学術講演会をこれまで81回開催し(2018年3月時点)、参加者間での交流や情報交換に役立てていただいています。また、マイコトキシンに関する原著論文、総説、テクニカルノートなどが掲載される学会誌JSM Mycotoxinsを年2号発行し、全会員に送付しています。学会誌は、2018年には第68巻となり、専門誌として研究成果公表に活用していただいています。もう一つの特徴は、非常に多くの賛助会員に参加いただいていることです。本学会は会員数が250名ほどですが、50を超える企業等が賛助会員として本学会の活発な活動を支えてくださっています。
 日本の気候はカビの成育に適していて、特に梅雨時は、マイコトキシンを産生するカビの活動が活発になりますので、マイコトキシン汚染への十分な警戒が必要です。熱帯や亜熱帯地域が主となりますが、アフラトキシン汚染問題は世界的に深刻で、いまだに汚染を防ぐ実用的な方法がありません。さらに心配なのは気候変動で、温暖化によるマイコトキシン産生菌の成育域の拡大が生じています。
 このように、マイコトキシン汚染問題は人類の安定した生活を考える上で、解決を要する重要な課題になっています。その中で本学会は、日本のマイコトキシン研究を支える研究者が集まり、日本の伝統的な高いレベルの研究成果を発信するとともに、世界の研究者と連携をとり、また、産学官の協力体制で、学会活動を行っています。ぜひ一度、学術講演会にいらしてみてください。とても楽しい学会であることを感じていただけるかと思います。

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